乙女座

乙女座 Virgo

獅子座の東隣にあり、全天で2番目に大きい乙女座は、星と星の間隔が大きく青白い1等星スピカ以外はっきりとは見えません。
おまけに、乙女座は真横になった星座です。翼を持った大女を探すのは至難の業です。

まず、簡単に見つかるスピカを探してみましょう。北斗七星のカーブ(春の大曲線※)した柄を延ばしていくと、スピカに突き当ります。ここが、乙女が右手に持つ麦の穂先となります。
清楚な輝きに相応しい「真珠星」と名づけられているスピカ。ところが、この真珠のような白さが曲者で、2万度と1万8000度の灼熱の星2つが、わずか4日の周期で軌道している近接連星なのです。互いの重力で引かれあってゆがむため青白く光りながら変光しています。赤色巨星への進化や、5重星の可能性が推測されているのですが、実体はまだ解明されていません。
「乙女座銀河団」は私たちから近いところにあり、多くの銀河が密集しています。地球から5900万光年の距離に2500個以上の銀河がひしめきあい、小望遠鏡があればくっきりと観測できます。それぞれの銀河は数千億の星々から構成されていて、多彩な表情をしています。なかでも、明るいM87は天の川銀河の100倍もの重さがある巨大楕円銀河。おそらく、いままで多くの銀河を吸収しながら拡張してきたのでしょう。宇宙は引力や質量の絡んだ弱肉強食の世界なんですね。

乙女座の神話はあいまいな逸話が多く、星座同様はっきりしません。ギリシア神話では地母神デメテルの美しい一人娘ペルセポネの物語が伝えられています。冥界の王ハデスに娘をさらわれたデメテルは洞窟にこもってしまい、地上は冬のまま飢餓となりました。このハンストが功を成し、ペルセポネは神の王ゼウスによって救われます。ところが、娘は冥界のザクロを4粒食べていたので、冥界で暮らさなくてはなりません。しかし、娘を冥界に返すとまた地母神デメテルがこもり、地上は餓死してしまいます。ゼウスの采配で娘は4か月間冥界に住み、残りは母のもとで過ごすことになります。娘が冥界にいる期間デメテルは洞窟にこもり地上は冬となり、春、夏、秋、冬の四季ができたといい、自然界の生命サイクルを物語る神話となっています。

ただ、夜空の乙女座は美しい娘ペルセポネだとも、地母神デメテルだとも言われ、はっきりしません。デメテルは農業の技術と実りの喜びを教える、大地に生きる地母神です。そう言えば、スピカが輝く麦穂は魔法の杖のようにも見えませんか。乙女座のモデルが誰かはわからなくても、麦や植物がすくすくと育ち、食物に困らないように杖を一振りした女神であることには変わりないようです。

春の星座 乙女座 Virgo ヴィルゴ (Vir)  見頃:6月7日 肉眼星数:167個

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